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わたしのブログ

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続きです。

このところ、私も色々と忙しい。北村の知人の所においてもらっていた無籍者が有籍者の家族の世話をする。まことに変なことになってしまった。熊谷さんも金銭上のことで宗と喧嘩した。私は別にお金入らないけれど、熊谷さんは家族がいるのでお金は苦しい。満人たちはお金に汚い。三月頃、宗は私に向かって「あんた、逃亡者だろう?ここを辞めればヤーメン(警察のこと)に言う。」と脅迫してきた。「馬鹿にするな。」と金目の物をかっぱらい浪花街に逃げた。(もらうべきお金と相殺になると思っていた。)東京で言えば銀座のような所である。キクヤ百貨店に入ると小さなラジオ点があったので持って来た真空管があった。「これを買ってくれないか?」というと、二十歳くらいの日本女性がいて交渉していると主人らしい人が帰ってきた。熊谷とか、宗の話をすると(難だ、熊谷君を知っているのか、私は局の庶務課にいたんだょ。丁度良い。この人ね、大の親日派の満人で漢方医のチャングイ(主人)だよ。ヂャクソン・ベルの受信機が具合が悪くて困っているんだ。君、治してくれないか?」といって、私に小さい声で「金なんかうんととっても良いんだよ。金持ちなんだから、/・・・。ヤンチョ(洋車)で送迎するから安全だよ。」私はすぐに乗って出かけた。インテリだけあって普通の満人と違い礼儀正しかった。小孔子という満人街だった。
このヂャングイ,中々日本語がうまい、北京大学を出て医者になったそうだ。「今晩は泊まって、ゆっくりと直してください。」と受信機を出してきたのでよく見ると、スクリーン・グリッとの抵抗が切れているために電圧がかからないだけのことであった。抵抗を取替え北京放送が良く聞こえるようになった。それから私のことを片さん(ペンシャン)といっていたのが先生(シーサン)と変わった。夕食をご馳走になってすいると前のヂャングイがフイに手鼻をかんだ。やはり中国人である。食べ終わると、後ろに立っていた女が雑巾のようなタオルを持ってきてなにやらいうので何事かと聞くと「この蒸しタオルで顔をふきなさい。」とのことである。これは参った.汚い。反対に顔の方が汚れてしまいそうだ。


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